私が日本を初めて訪れたのは、大学生の時でした。
パリの大学に通っていた私は、東洋の、とくに日本の文化に強い興味をもち、
世界一周の旅の最後の目的地に、日本を選びました。
その中でもヒッチハイクをしながら曹洞宗の大本山、
永平寺を目指したことは旅の最大の思い出です。
フランス人の私を、恥ずかしそうな笑顔で自分のクルマに乗せてくれた人々の優しさ。
圧倒的な威厳を静けさの内側に隠し、私を迎えてくれた永平寺の風景。
私と日本との出会いは運命的なものだったのです。
今、私はゴディバ ジャパンのCEOとして愛すべきこの国で働いています。
私は日本という国から多くのことを学びました。
30年来続けている弓道もそのひとつ。
日本に古くから伝わるこの武道は、実に驚嘆すべき教えに満ちています。
正しい射法を行えば、矢は必ず的にあたるという考え方、
矢はあてるものではなく、あたるものなのだと教えられました。
このシンプルで奥深い教訓は、私のビジネスの哲学となりました。
武道は全て、礼法を重んじています。
いや、武道に限らず日本は礼節の国だと感じています。
恩師、世話になった人、地域の先輩、親族の長者などに対する敬意と挨拶を忘れません。
今でも地方を旅すれば、見ず知らずの外国人である私に、
下校中の生徒たちは帽子を取ってお辞儀をしてくれる。
その風景はしみじみと美しいものだと感じました。
しかし、今、私は心配しています。
世界中を巻き込んだ新型コロナウイルスは、
この日本の美徳さえも損なおうとしているのではないかと。
ロジスティックに携わる人々や、あろうことか医療従事者の家族までもが、
心ない言葉をあびせられたり、他の県から来たクルマに卵が投げつけられたり。
私はそんなニュースに接するたびに胸が痛みました。
この国に限って、そんな出来事は起きないだろうと固く信じていたのですから。
新型コロナウイルスの邪悪さは、人々の心さえ病ませてしまうところなのかもしれません。
この先にやってくる、ニューノーマルと言われる社会で、
この国の美しい礼節はどう変容していくのでしょう。
できるなら、自ら恩人を訪れて、挨拶ができなかったことを詫び、旧交を温める、
そんな美しい礼節の国、日本が戻ってきて欲しいと、心から思っています。
#負けないで
ゴディバ ジャパン CEO
ジェローム・シュシャン
また、ゴディバでお逢いしましょう。